前回は、「発生主義と現金主義」が学問の世界や実務の世界ではどのように
考えられているかを述べました。
実務の世界、特に税金計算の際には、実際にどのように考えればよいのでしょうか?
収入(売上)を現金主義で計上すると、発生主義で計上するよりも遅いタイミングで
売上の計上を行うことになります。
発生主義による売上計上よりも儲けが少なく計算されます。
このような処理をしていると、税務調査が入ったら調査官に指摘されて、発生主義で
修正申告しなければならなくなる可能性があります。
支出(仕入や経費)を現金主義で計上すると、発生主義よりも遅いタイミングで仕入や
費用の計上を行うことになります。
発生主義による仕入・経費の計上よりも儲けが多く計算されます。
こちらのほうは税務調査で指摘されることはあまりありません。
対税務署だけを考えれば、売上については発生主義を採用し仕入や経費については
現金主義を採れば問題が起こりにくいのです。
ただし、月次決算を行う場合や会計数値を意思決定に使おうと考える場合には、
収益・費用ともに発生主義によることが求められます。
税金の計算だけのために決算を行う場合は、売上を発生主義で計上し仕入や経費を
現金主義で計上してもあまり問題ないと思われます。
しかし、会計の数字を経営の意思決定に使うのであれば、発生主義をベースにした
処理方法を採ることが望ましいと思われます。
といっても、「何でも発生主義」という硬直した考え方ではなく、意思決定に影響のない
範囲で簡便的な方法を採用することが実務的な効率のよさや月次決算の早期確定に
役立ちます。