枚方市の税理士三木博人です。
システム開発などを行う会社には一般的に「商品在庫」はありません。
モノを仕入れて販売するという形態ではなく、人件費などをかけて発注されたものを
作り上げていくというイメージです。
その際には、材料などもほとんどかかりません。
作業をする人たちの人件費や下請けなどに出した場合の外注費(外注先でも内訳は
人件費が多くなります)がコストの多くを占めます。
これらは「人件費」として処理しがちですが、請負契約(システム開発や工事などは
請負契約である場合が多いです)の場合の原価については、次のような通達があります。
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法人税法基本通達2-2-5(請負収益に対応する原価の額)
請負による収益に対応する原価の額には、その請負の目的となった物の完成又は
役務の履行のために要した材料費、労務費、外注費及び経費の額の合計額のほか、
その受注又は引渡しをするために直接要した全ての費用の額が含まれることに留意する。
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ここでいう「原価」とは、お金を払ったのに費用にできず、一時的に資産に計上して
売上を計上したタイミングで費用にするものをいいます。
通常の経費であれば、支払ったタイミングで費用になりますが、原価の場合は
売れるまで費用にできないという点が異なります。
この点で、商品在庫と同じような考え方を採ります。
商品在庫も仕入れたタイミングではなく、売れたタイミングで費用計上されます。
税金計算する際に、支払ったタイミングで費用にしていた場合、費用が過大になり
利益が少なく計上されます。
利益にかかる法人税などが少なくなるので、税務調査などでこの処理が発覚した
場合は修正が求められます。
対策としては、契約ごとに原価を把握し、費用勘定ではなく資産勘定にそれらを
計上していきます。
売上が計上されたタイミング(請負の完了のタイミングです)で資産勘定に計上した
それらを売上原価に振り替えるようにします。
この場合、人件費などが在庫に計上されるような感じですが、収益と費用を対応させる
という点からも、税金の計算の点からも、いずれにおいても適正な処理です。