消費税の税込経理と税抜経理のメリットデメリットについてまとめてみます。
まずは、税込経理のメリットとデメリットからです。
☆税込経理のメリット
1.手軽である。
2.会計ソフトを使用している場合、消費税率の変更があっても更新する必要がない。
3.売上高を大きく見せることができる。
などです。
1.については、例えば手書きで記帳している場合、取引のつど消費税を税抜にするのはかなり面倒ですが、税込経理であればその必要がありません。
ただし、会計ソフトを使用していた場合はあまり影響はないと思われます。
2.については、会計ソフトで税抜処理をすると、自動的に消費税部分を抜き出してくれるのですが、消費税率が変わったら旧税率にしか対応していないソフトは使えなくなります。
しかし、税込経理の場合には、そのような影響はありませんので、旧税率にしか対応していなくても問題ありません。
(ただし、会計ソフトで消費税の申告書を作成する場合は、新税率に対応していないといけません)
3.については、例えば年商が税抜9,800万円の場合、税込経理なら1億290万円(消費税率5%の場合)となり、「年商1億円」が達成できます。(ちょっとズルい気がしますが・・)
消費税率が上がれば上がるほど、この部分の影響は大きくなります。
続いて、デメリットについてみてみます。
★税込経理のデメリット
1.納税額がはっきりわからない
2.消費税の納税額がわからないと会社の利益がわからない
3.法人税などの計算上不利になる場合がある
1.については、別途消費税計算を行う必要があります。
消費税計算を決算を迎えるまでにこまめにやらないと、突然多額の消費税を払わなければならないことが決算後判明したりします。
消費税は赤字でもかかるので注意が必要です。
2.については、消費税の納税額が経費になるため、納税額が決まらないと会社の決算数値が決まりません。
そして困ったことに、消費税の納税額を考慮すると赤字になるということが起こります。
何としても黒字にしたかったのに、消費税を費用に計上したら赤字になる、ということになります。
この場合も「黒字にしたいから消費税は支払時に費用にする」ということをする人もいるようです。
こうすると支払時=翌期の費用となり、とりあえず今期(決算をしている期)は黒字を確保できたりします。
しかし、これは計上すべき費用を計上すべき時期に計上していないという意味ではルール違反となります。
3.については、例えば30万円未満の固定資産を購入した場合は一回で費用に計上できる(減価償却しなくてよい)という特例があります。
この金額基準については、税込・税抜を問わず30万円です。
本体価格29万円、消費税込で30万4,500円という固定資産を購入した場合でみてみます。
税込経理であれば、30万円を超えてしまうので、この資産は減価償却資産となり、法定耐用年数に従って償却することになります。
しかし、税抜経理であれば、29万円となり30万円未満ですので、一回で経費にできます。
また、3万円未満の領収書には印紙を貼らなくてもよいのですが(平成26年4月1日からは5万円未満になります)、この3万円や5万円という金額の判定も税込・税抜を問わないのです。
本体価格29,800円の売上であれば、税込経理の場合は印紙を貼る必要があります(税込で31,290円)が、税抜経理なら貼らなくてよいということになります。
税込経理は、会計ソフトを使用せず、手書きで記帳する場合には有効です。
ただし、3のように他の税金の取り扱い上不利になる場合がある点には注意が必要です。