会計の役割には、
①投資家への報告
②債権者への報告
③課税当局への報告
④企業内部(従業員など)への報告
などがあります。
しかし、これらの役割は主に会社(株式会社)における会計の役割を想定しています。
個人事業者が会計というツールを使う場合、これらのうち②と③くらいしか
ニーズがないと思われます。
②=金融機関からの借入を想定しない場合、③=税金計算でしか会計を
使用することはありません。
そもそも、金融機関からの借入の際にも確定申告書に添付した
決算書の提出を求められます。
なので、ほぼ③=税金計算のニーズしかありません。
金融機関は③=税金計算用の数字をそのまま個人事業者の業績としています。
(会社の場合は、税金計算用の数字と会計の数字は異なる場合もあります)
このように考えると、個人事業者の会計知識は税金計算のための
ツールのみであるということになります。
もちろん、個人事業者でもいくら売上があって、いくら経費を使って、いくら儲かったか
ということを知ることは可能です。
しかし、会社の場合は法人税の申告で、会計の数字を調整して税金計算をする
のに対し、個人事業者はそのような調整が想定されていません。
会社の場合は、回収の見込みのない売掛金に対して、会計上は
回収可能性ゼロであるとして引当金を計上して、税金計算ではその引当が
なかったものとする(別表加算といいます)ことができます。
個人事業者の場合は、税務上必要経費に算入できるものだけが貸倒損失
(貸倒引当金繰入の場合もあります)として計上されるので、税務よりも
厳しい基準で会計を運用することができません。
また、個人事業者の場合は、減価償却費も「会計上だけ」耐用年数を
長くしたり短くしたりということができません。
これらをしようとすると、二重帳簿になり、管理が難しいのです。
個人事業者で会計を経営に活かそうとするとなかなか難しいです。
会計を経営に活かそうとするなら、法人への移行なども検討すべきであると
考えられます。