会社と個人で異なる取り扱いの一つに「個人事業主は自分に給料を払えない」
というのがあります。
厳密に言えば、「自分に給料を払っても経費にならない」ということです。
自分が自分に給料を払うというのは、お金を自分の財布からいったん出して
それをまた自分の財布に入れるということになります。
このような場合、「給料」という経費ではなく、「事業主貸」という科目を使います。
「事業主貸」とは、事業用のお金を個人用の財布に移した場合に使う科目です。
会社では、自分に対して給料を出して、会社ではその給料を経費にすることが
できます。
これは、個人事業の場合と違って、会社と会社の社長は別ものだからです。
この「会社と社長は別」ということを意識しておくと、
「会社のお金を社長が個人的に使った」という場合に、
会社から見ると「社長への貸付金」になるということが
わかると思います。
会社からすると、会社に関係のない出費であれば、あとでその分は
返してもらわなければなりません。
また、個人事業主は自分自身に対しては福利厚生費を
払うということもできません。
従業員に対する福利厚生は当然認められます。
しかし、個人事業主は自分に対する福利厚生は認められません。
例えば、厚生年金への加入は、従業員は認められますが事業主は加入できません。
会社であれば、社長を含めて福利厚生の対象となることは可能です。
ただし、いくら会社であっても、無制限に給料を出したり、福利厚生を
受けることができるわけではありません。
少数の人で意思決定ができる会社であれば、一方的に会社が損をする
取引であっても行われてしまうかもしれません。
そのような取引を認めてしまうと、不当に税負担を免れる可能性があります。
そこで、税法では「同族会社の行為計算の否認」という規定を用意しています。
税負担を回避するための不自然な行為に対して、税法は常に目を
光らせています。