枚方市の税理士三木博人です。
前回は無理やり利益を出した決算書の特徴について述べました。
いわゆる「粉飾決算」というものです。
ちなみに「不適切会計」や「不正会計」も「粉飾決算」とあまり変わりません。
言葉の定義に定まったものがないため、いろいろな表現方法があるようですが
決算書で「無理やり利益を出す」ことを指しているのはどれも同じです。
粉飾決算をするとどのようになるでしょうか?
本来は利益が出ていないのに利益を計上するため、利益対して
かかる税金(法人税、住民税、事業税など)がかかります。
ただし無理やり利益を出したとしても、お金が湧いて出てくるわけではないので
「お金がないのに利益が出ている」という状況が生まれます。
そこで、税金の支払いをしなければならないので、資金面では大変苦しくなります。
(もともとは赤字ですので、資金が潤沢にある状況のほうが少ないでしょう。)
上場企業であれば、公認会計士の監査を受けるため、「無理やり利益を出す」
ことには一定の制限があります。
(それでもたまに発覚しますが。)
投資家に財務内容を開示する必要のない中小零細企業では、公認会計士の監査
などはないため、決算内容のチェックといえば、数年に一度の税務調査だけ
ということになります。
税務調査では、本来支払う必要のなかった税金を払っていても問題にならない
ことが多いので、中小零細企業では「無理やり利益を出す」ということに対する
ハードルは低いと思われます。
しかし、本来赤字であり、支払う必要のない税金まで払って「無理やり利益を出す」
ことが会社にとって有効なのでしょうか?
税金を払った後も、融資を受けた借入の返済が続きます。
「無理やり利益を出す」行為は、将来の利益を先食いしただけ、という
ことでもありますので、翌期以降はマイナスからのスタートとなります。
マイナスからのスタートであっても翌期も利益を出して、借入の返済を続ける
となれば、相当頑張る必要があります。
正当に頑張って利益を出す体質にする、ということであればよいのですが
そうでなければ、翌期以降も同じことをするでしょう。
これを繰り返すと、いくら黒字にしたからといっても、融資が受けられなくなった
時点で破たんしてしまうことは明らかです。
「無理やり利益を出す」という行為は、中小零細企業にとってはハードルが
低いのでつい手を出してしまうのですが、将来のことまで考えると得策では
ありません。
目先の問題解決(今すぐに融資を受けたい、ということ)と将来どうなるか
(融資の返済をしながら会社を存続させることができるか)の両方を考える
必要があります。