「課税の繰り延べによる節税」とは、当期にたくさんの費用を計上する
ことにより利益を減らすことで、当期の税金支払いを少なくするものです。
ただし、翌期以降で支払った費用が戻ってきて利益が計上されます。
その利益に対して税金がかけられるので、トータルでの税負担は
何もしない場合と同じになります。
トータルで同じなら、何もしない方がよいのでしょうか?
そうではありません。
当期に予想外に利益が出た場合、当期の納税額を抑えて、翌期以降に
平準化することには意味があります。
現在の税制では、過去と現在の赤字と将来の黒字は相殺できます。
この規定を「欠損金の繰越控除」といいます。
過去9年間で発生した赤字は、将来利益が出た時にその利益から差し引いて
税金の計算をすることができます。
(資本金1億円以下の会社を前提にしています。以下の例も同様です。)
しかし、過去と現在の黒字は将来の赤字と相殺することができません。
例外的に「欠損金の繰り戻し還付」という制度があります。
この制度を使えば、前期が黒字で税金を支払っていて、当期が赤字であれば
当期の赤字分に相当する法人税を還付してもらえます。
ただし、これが使えるのは前期分の黒字だけです。
欠損金の繰越控除が9年間使えるのに対して、繰り戻し還付は1年分だけです。
また、欠損金の繰越控除は法人税と事業税のどちらにも適用されますが
繰り戻し還付は法人税のみの適用なので、事業税については繰り戻し還付されません。
このように、黒字を先行計上するよりも赤字を先行計上するほうが
税制上有利なので、利益を繰り延べることには意味があります。